サラ】グラデーションを日本語にすると?
フク】グラデーション? 日本語はわかんないけど、色が変わっていくこと。
サラ】うん。そうね。色の段階的変化のことを意味する言葉ね。
水彩の技法で言うグラデーション(Gradation)も、色を段階的に変化させて塗ること。
この技法では、透明水彩ならではの”美しさ”に心を浸すことが出来るわよ。
前回に引き続き、技法を使いながら下の絵を完成させるまでの過程を解説していきます。
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さて、今回も始めましょう。
手順を参考にあなたも描いてみてね!
【 ページの目次 】
【お知らせ】動画で学ぶ水彩技法
YouTubeチャンネル「水彩セラピー 水彩時間 」を開設しました。
このページで紹介している水彩技法:グラデーションのやり方を動画で学べます。
【グラデーションの手順とコツ】
手順1)最初の色をウォッシュする
筆にたっぷり色を含んで、葉っぱの上から中心に向けて塗ります。
ここでは明るめの赤色を塗っています。
注)ウォッシュという技法は、広い面を塗る時に使うことが多いのですが、
ここでは感覚的に理解しやすいように、“たっぷりの水で溶いた色”を、“筆にたっぷり含んで”塗るという意味で使います。
手順2)片側から別の色をウォッシュする
同じように、筆に別の色をたっぷり含んで葉っぱの下から中心に向けて塗ります。
ここでは明るめのオレンジ色を塗っています。
手順3)真ん中で2つの色をなじませる
葉っぱの真ん中くらいの位置で、赤色とオレンジ色がなじむように、筆でぼかしていきます。
たっぷりの水を使っているので、筆で軽くなじませるだけで、水の力で混じり合っていきます。
手順4)自然乾燥で乾かす
自然乾燥で乾かすと、赤色からオレンジ色のグラデーションになります。
※ここでは2色でのグラデーションですが、水を含んだ筆を片方から延ばしていくことで、1色だけのグラデーションを作ることもできます。
また、3色、4色と同系色の流れで色に変化をつけていくと、色彩豊かなグラデーションが出来上がります。
グラデーションを作るときは、ドライヤーを使わず自然乾燥をした方がきれいに仕上がります。
サラ】水彩の技法の5時間目。グラデーション!出来ましたか?
フク】一応出来たけど、段階的に・・・っていうほど、きれいな色の変化ができなかった。
サラ】そうなのよねー。水の量や色の拡散具合によっても違ってくるの。でも、これも慣れてくると上手になってくるのよ。グラデーションの美しさが水彩の魅力の1つだから、この技法がマスターできると、またぐぐ~んと楽しくなるわよ!
そうそう、ここで色について大事なことをひとつ!グラデーションでは、補色(反対色)を使わないということ。
フク】ほしょく?・・・なんとなく聞いたことがあるけど、実際には意味がわかってなーい。
サラ】えーっと、じゃあ説明するわね。次の輪の色を見ててね!
色彩の学び)12色相環と補色関係
12色相環(しきそうかん)というものなんだけど、
12時のところにある『赤色』の補色(反対色)は6時の位置にある『緑色』になるの。
フク】なるほど。
サラ】じゃあ、明るい『黄色』の補色は何色でしょうか?
今読んでいるあなたも答えてみてね!
フク】えっと、4時の位置にある『黄色』だから・・・その反対の10時の位置にある『紫色』!
サラ】そう!大正解!
フク】補色っていう意味はわかったけど、どうして、補色同士でグラデーションしたらいけないの?
フクは『黄色』と『紫色』って、大好きな色なんだけど・・・このふたつの色でグラデーションしたらきれいだと思う。
サラ】うん。どちらもきれいな色よね。でもね、補色関係にある色が混ざり合うとね・・・『灰色』になっちゃうの!
フク】うわーっ。絶望的な色!
サラ】そうね。だからグラデーションに限らず、ウェット イン ウェットや、ウェット オン ドライでも、混ざり合う色や、重なり合う色ではちょっと注意が必要なの。
透明水彩の絵の具で絵を描いていて、「なんだか色が濁ってしまう」と感じた時は、そういう色使いをしていることが多いの。
また、筆を洗う水が濁ってきてたり、筆をきれいに洗わないまま他の色を塗るのも要注意!
グラデーションを作る時は、この色相環で示す、隣り合う色や同系色の色を使うことで、すっごくきれいな色の変化を出すことが出来るわよ!
フク】わかった。さっそく試してみよー。
サラ】それともう1つ!
フク】まだあるの?
サラ】うん。補色関係にある色が混ざってしまうと『灰色』になってしまうから要注意!・・って言ったけど、
フクちゃんは、水彩で絵を描いていて『灰色』で塗るところがあった時、どんな色を使ってる?
フク】えっ、そんなの簡単だよ!
絵の具の『白色』と『黒色』を混ぜて作るよ!
サラ】やっぱりねー。
透明水彩の『白色』の絵の具は、半透明(不透明色に近い)色なの。
だから『灰色』を作る時に限らず、初心者の人がやってしまいがちなのが、色を明るくするために『白色』を混ぜてしまって透明感がなくなってしまうこと。
さっき、絶望的・・・って言っていた補色で出来る『灰色』って、実は透明感があってよく使う色なの。
例えば、花を描くときでも、明るい色の所ばかりではないでしょう?
日の当らない陰の部分や、日が当たって出来る影もある・・・。
そんな時に、透明度の高い補色で作った『灰色』って大活躍するの。
陰や影の色は、この補色を使うといいわよ。
補色関係によって『冷たい灰色』や『温かい灰色』という感じで、微妙に違う色味の灰色が出来るのよ。
また『黒色』も、水彩では強すぎるから補色でつくった『濃い灰色』を黒色として使うようにするといいわよ。
そうそう、
透明水彩の絵の具でいう“透明な色”と“不透明な色”の違いって、これも初心者の人にはわかりにくいと思うけれど、サラの感覚で言うと、パレットに色を置いた時に、
濃く暗く見えるほど透明感のある色
白っぽい明るさの色ほど不透明な色って覚えておくといいと思う。
一見明るく見えてしまう白っぽい色は“不透明な色”が多いの。
フク】なるほどー。透明水彩っていうから、どの色もクリアな透明感があると思ってた。
絵の具の色によって透明度に違いがあるってことだね。
補色の『灰色』にしても使い方次第。
補色を使うことで、よりきれいな色が引き立ったり、陰影を表現することで光や立体感を表現したり出来るってことだよね。
サラ】そうなの。透明感のある『灰色』を使いこなせようになると、絵に深みを持たせることが出来るようになるのよ。
写実的な絵を上手に描ける人は、モチーフの構造を理解した上で、この陰影のつけ方が上手いのよ。
補色関係、特に『灰色』の使い方がわかってくると、また、ぐぐぐ~んと楽しく、上手に描けるようになるわよ!
あなたも、この補色という色の関係性を・・・ちょっとだけ意識してみてね!
とくに、”色が濁ってしまう”・・・という時は、チェック項目のひとつになります。
とはいえ・・・付け加えておきますね。
“表現”というジャンルにおいては、“自由”が基本です。
透明水彩だから“こう描くのが正しい”という規約みたいなものはありません。
あなたの心が「やってみたい」と思ったことは、まず試してみて下さい。
失敗からの学びがあったり、それがきっかけで、誰もやってこなかった新しい表現を、あなた自身が見つけることになるかもしれませんから・・・
ここで学んだ技法が、あなたの表現のスタイルとして役立つことになれば、サラはとても嬉しいです。
さてさて、次は、
“水の妖精”が起こす楽しいイタズラ現象。バック ランの技法をご紹介します。