サラ】スパッタリングを日本語にすると?
フク】またまたその質問? わかんなーい!!
あ!よく似た言葉で、スプラッター映画っていうのを先週、映画館で観たよ。
あのね、血がどばーって飛び散る内容ですごく怖かった!
サラ】サラはそんな映画絶対みない! 夜、眠れなくなるもん。
でも、それって答えに近いかも!
水彩の技法で言うスパッタリング(Spattering)とは、絵の具を飛び散らせること。
もとは、調理中の炒め物などで発生する“油のはね現象”を表現する言葉なの。
このスパッタリングは、筆で描く絵ならではの躍動感を表現できるわよ。
それに単調になりがちな水彩画において、効果的なアクセントにもなり得るの。
ここでは、スパッタリングのふたつのパターンを紹介していきます。
ひとつ目は、背景にアクセントをつけるために用いるスパッタリグ。
ふたつ目は、モチーフのテクスチャ(質感)を表現するために用いるスパッタリング。
ここでも、技法を使いながら下の絵を完成させるまでの過程を解説していきます。
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さて、今回も始めましょう。
手順を参考にあなたも描いてみてね!
【 ページの目次 】
【スパッタリングの手順とコツ】
手順1)背景にスパッタリングするための準備1
ダウンロードした線画を水彩紙にトレースし、下絵を描いた後、水彩紙の周りを保護するためにマスキングテープを貼っておきます。
※水彩画、水彩イラストで、背景を紙の淵まで描きたい場合はマスキングは必要ありませんが、淵をマスキングしておくことで水彩紙の周りを汚さず描けます。
手順2)背景にスパッタリングするための準備2
スパッタリングは絵の具を飛び散らす技法です。
予想以上に飛び散ることもあるので、マスキングテープを貼った上から、テーブルに飛び散ることを想定して、四辺を保護するためにキッチンペーパー等でカバーしておきましょう。
キッチンペーパーはマスキングテープで固定しておくとズレることがありません
手順3)2本の筆を使ってスパッタリング
色を含んだ筆(ここではオレンジ色)と、ストッパーとしてもう一本の筆を用意し、バツの形にして、トントン・・・と叩きます。
筆に含んでいる色が飛び散ります。
コツは、筆にあまり多くの絵の具を含ませないことと、軽くたたきはじめることです。
多くの絵の具を筆に含ませてしまうと、叩く前にポタリとダマになって落ちてしまいます。
手順4)乾くまで待つ
飛び散った色が乾くまで待ちます。
ドライヤーを使って乾かしてもいいですが、スパッタリングした絵の具はドーム状の厚みになっているので、横から強い風を当てると色が流れます。
しばらくそのまま放置して、半乾きの状態になったら真上から弱い風で温めるように乾かすときれいに乾きます。
手順5)別の色をスパッタリング
彩りを楽しむために、違う色も試してみましょう。ここでは明るい緑色を使っています。
ここで使ったオレンジ色と明るい緑色は、5時間目のグラデーションの時に学んだ補色関係に近い色になりますが、点として存在しているので、『灰色』になる重なりの部分が少なく、それぞれの鮮やかな色味を活かせます。
ここでも乾くまで待ちましょう。乾くと背景のスパッタリングの完了です。次の手順に進む前に、キッチンペーパーを外しておきます。
手順6)きれいに乾かす時間をとる
スパッタリングは、絵の具の厚みができやすいので乾くのに時間がかかります。きちんと乾かす時間をとりましょう。
小鳥のフクちゃんの休憩の取り方は上記の通り。
あなたも休憩を取りながら進んでくださいね。
ここでは少しの休憩の後、モチーフの葉っぱのテクスチャ(質感)を表現するためのスパッタリングの準備をします。
手順7)マスキング紙を作る
ダウンロードした線画(ボールペンでトレースした後の紙)をそのままスパッタリングのマスキング紙として利用します。
スパッタリングを適用する葉っぱ3枚を切り抜きます。
ここでは、③、⑥、⑧の葉っぱになります。
手順8)切り抜きはカッターを使う
切り抜く時は、カッター台を下に敷いて、葉っぱの形にそって、カッターを使って切り抜きましょう。
スパッタリングするためのマスキング紙の出来上がりです。
手順9)切り抜いた位置の葉っぱに色を塗っておく
切り抜いた葉っぱと同じ位置に当たる水彩紙の方の下絵、3枚の葉っぱに、色を塗っておきましょう。
今まで学んだ技法、ウォッシュ、ウェット イン ウェット、グラデーションなどを使って塗ってみましょう。
手順10)色を塗った3枚の葉っぱをきちんと乾かす
3枚の葉っぱに色を塗ったら、自然乾燥やドライヤーを使ってきちんと乾かしておきましょう。
手順11)マスキング紙をかぶせる
手順7)で作っておいたマスキング紙を、水彩紙の上にかぶせます。
切り抜いた葉っぱのところは、色を塗っているので上の画のような見え方になります。
手順2)でやったように、飛び散った色で周りを汚さないように、その上から四辺を保護するためにキッチンペーパー等でカバーしておきましょう。
マスキングテープで固定しておくとズレることがありません。
手順12)切り抜いた葉っぱの上でスパッタリング
今回も筆をバツの形にして、一つ一つの葉っぱの上でトントン・・・と叩きます。筆に含んでいる色が飛び散ります。
ここで使用する色は、枯葉の虫食いや模様に見えるように、同系色や、色味が近い色がおススメです。
ここでは、オレンジ色の葉っぱで同系色の焦げ茶色を、また、緑色の葉っぱでは、緑に近い青色を使います。
手順13)乾くまで待つ
スパッタリングしたら乾くまで待ちます。
ドライヤーを使う場合は、絵の具が流れないように真上から弱い風で温めるように乾かしましょう。
※ここでは、筆を2本使ってスパッタリングしました。
スパッタリングは、他にもコシのある平筆や歯ブラシに絵の具をつけ、指ではじくことによって細かい飛び散りを作る方法や、専用の道具もあります。
手順14)マスキング紙をはずして完成です。
きちんと乾いたことを確認し、キッチンペーパーとマスキング紙をはずして完成です。
葉脈をリフトアウトで描き足しておくと葉っぱらしい表情がでてきます。
ここで、最初に説明したスパッタリングのふたつのパターンを確認しましょう。
ひとつ目は、背景にアクセントをつけるために用いるスパッタリング。
ふたつ目は、モチーフのテクスチャ(質感)を表現するために用いるスパッタリング。
ここでは紙をモチーフの形に切り抜き、マスキング紙として使用しました。
この2つのやり方を覚えておくと表現の幅が広がりますよ。
サラ】水彩の技法の7時間目。スパッタリング!
出来ましたか?
フク】できましたー。 単調な絵も、この技法を使うと、イキイキしてくる感じ!なんだかアーチストになった気分!
サラ】うん。確かにね! 最初のうちは、どれくらい絵の具が飛び散るかわからないから、カバーするキッチンペーパー等は広めにしておいてね。テーブルや床を汚さないようにね!
フク】了解!ちゃんと広げてやってたよ。
これまで学んできて思ったことなんだけど、水彩の技法って
先に塗った色がまだ濡れている間に、すばやく次の色を塗る時と、
きちんと乾くまで待った後に塗るっていう場合があるよね。
待っている間は休憩以外に何かやっておくことはないの?
サラ】今回のように、次の準備をしたり、水を替えたり、パレットを拭いたりした後は、コーヒータイムをとって絵を味わい愛でるのも大切な時間よ。
プロセスを楽しむこと。
それにリラックスした状態だと客観的な視点を持てるから、思わぬ気づきがあったりするの。
自作で少し大きめの絵を描いている時や、行き詰った時、また完成間じかになった時には、
一度離れて見たり、絵をひっくり返して見てみたり、鏡に映して見てみたり・・・そうすることで次に筆を入れる一手が自分自身でわかってくるわよ。
上手く描くことばかりに意識が向いていたり、失敗を補おうと焦っていると、その視点がもてなくなるの。クールダウンする時間を持つこと。
なにより絵と対話する時間は楽しい癒しの時間でもあるから大切にしてね。
次はテクスチャ(質感)の表現を広げてくれる技法、ドライ ブラシをご紹介します。